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佐藤 奈穂
DIAGIRL(ディアガール)が目指すこと
“DIAGIRL”(ディアガール)は,カンボジアの女のコと日本の女のコが一緒に創りあげるアクセサリーブランドです。日本の女のコたちとカンボジアの貧しい女のコたちが,お互いに“今よりちょっと幸せになること”がDIAGIRL(ディアガール)の目標です。
日本の女子大生がアクセサリーのデザインをして,現地の女性たちが作っています。完成したアクセサリーを日本で販売し,その収益をカンボジア女性たちに還元しています。でも,日本の女子大生がカンボジアに滞在して,彼女たちにアクセサリーを作ってもらうのは大学の夏休み1週間だけ。カンボジアの貧しい女性たちがアクセサリーを作って,お手当てが受け取れるのもその期間だけです。そんなDIAGIRLの活動に「一時的にお金持ちになるだけだよね」「継続しなくて意味あるの?」という疑問を持つ人もいるかもしれません。
“現地に根をおろして,現地の人たちと一緒に暮らして,彼女たちにきちんとした雇用を提供する。そうすることで現地の人々に対して責任を果たす”。
これは国際協力の理想的な姿の1つ。DIAGIRL(ディアガール)は,そんな風に彼女たちの生活全部を引き受けるようなお手伝いはできません。でも,DIAGIRL(ディアガール)が行う「期間限定」的な国際協力は,実はカンボジア社会の実情に,そして,大学生が行う国際協力の限界にも適した面があるのです。
すぐに仕事を辞めるカンボジア人
日本でも世界でも,金銭的な利益だけでなく社会的な貢献を求めるソーシャルビジネスが広く行われるようになりました。カンボジアでも与えるだけの援助ではなく,ビジネスを展開することで人々の雇用を創りだす活動がたくさん行われています。でも,カンボジアでそんなビジネスを行っている日本人が口を揃える問題があります。それは,「カンボジア人はすぐに仕事を辞める」ということ。
“やっと仕事を覚えたと思ったら辞めてしまった。”
“優秀な人だからマネージャーにしたのに辞めてしまった。”
“本当にカンボジア人は仕事が続かない”。
こんな状況に直面して,「カンボジア人は飽き性で根気がなく,義理も恩もない人たちだ」と評する人もいます。でも,そんな「根気のない」彼らの行動をカンボジア社会の実情から捉え直すと,仕事を変えていくことの方が,実は「合理的な選択」だと理解できるのです。
私は,1995年にカンボジアを初めて訪れてから,現地にトータル4年ほど住んだ経験があります。その内1年間は農村で村の方の家に住み込みながら社会経済調査を行っていました。そこで見た人々の働き方は,実に多様なものでした。特に,農業に従事する人々はたくさんの仕事を兼業していて,稲作を行いながら農閑期に小売業を行ったり,ゴザや籠を編んだり,菓子を作ったり,建築労働に従事したりと農事暦に合わせて様々な仕事を組み合わせて生計を立てていました。そして,その時々に選択される仕事も一様でなく,さまざまに変化していきます。一年後に再び聞き取り調査を行うと,全く異なる生業に従事している,ということは少なくありません。
また,首都プノンペンで働くホワイトカラーの友人たちも頻繁に職を変えます。条件の良し悪し,結婚や育児などライフスタイルの変化に合わせて常に仕事を変えていくのです。
1つの仕事に長く従事することは,彼らにとっての美徳ではありません。1つの仕事に専念し,技術を高めて,人脈や情報を蓄積しながら所得の向上を目指すよりも,多様な仕事にリスクを分散させること,その時々に合った仕事を選ぶことが,彼らにとっての「合理的な選択」なのです。
カンボジアの人々にとってのメリット
DIAGIRL(ディアガール)が現地で行うアクセサリー制作は,シェムリアップ郊外の農村部で9月初めに行われます。9月初旬は,田植えや稲刈りもない農閑期です。また,シェムリアップ中心部では建築ラッシュが続いていて,農村部から建築労働に従事する人々がたくさんいます。でも,9月は雨季なので乾季に比べると建築の仕事も少なくなる時期です。
カンボジアの人々は,海外から支援やビジネスが持ち込まれる前から,稲作をしたり野菜を作ったり,家畜を育てたり,モノを作ったりと,たくさんの仕事をしていました。「期間限定」的な仕事は,そんな多様な仕事の中の1つの選択肢になります。彼らの仕事を縛ることなく,彼らの働き方を尊重することになるのです。
大学生にとってのメリット
大学生が国際協力を行うには多くの制約があります。NGOの専門家に比べれば知識も技術もなく,活動に専念できる時間も現地に滞在できる期間も限られてます。そのため,国際協力に関心のある学生は“見て学ぶ”スタディーツアーに参加したり,NGOの活動に部分的に参加したり,現地で活動する団体や個人を頼って活動を行うことになります。
DIAGIRLの活動も,当初,現地で根を張り活動を行うNGOを頼りに始められました。しかし,学生たちの夢の実現のために,彼らの足を引っ張るばかりの現状がすぐに現れたのです。学生の学びのために現地の支援がなおざりになるのでは本末転倒です。
そこで,学生たち自身でできる範囲の活動を模索したのが,今の「期間限定」的な形なのです。
「期間限定」的な活動は,学生自身ができる範囲で行う国際協力です。現地に長期滞在するNGOのような大きな成果ありません。でも,「期間限定」的な支援は,カンボジアの人々の働き方に則した仕事の提供でもあります。日本の大学生もカンボジアの女性たちも,互いの置かれた環境の中で最大限の効果を創り出していく。それがDIAGIRL(ディアガール)の提案する新しい国際協力のあり方なのです。
DIAGIRLが提案する新しい国際協力
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